紅葉の英彦山-超・山伏コースを行く

 弥彦山(新潟県)、雪彦山(兵庫県)と共に「日本三彦山」で知られている英彦山(ひこさん)は、階段、鎖場、切り立った岩壁や鉾のような奇岩が聳えている修験道の山である。この山に最初に登ったのは、平成9年5月10日で、Camp 2主催「123日で日本100名山を連続踏破した重廣恒夫さんと登る会」に参加した時であった。
 英彦山の登山コースはいろいろあるが、重廣さんと登った時は、別所駐車場から高住神社、北岳、中岳〔上宮〕、中宮、下宮、奉幣殿を経て駐車場へ戻る周遊コースであった。その時、秋の紅葉時なら、南岳から鬼杉を回るコースが素晴らしいという話を聞いて,いつか紅葉の時期にこれを歩いてみたいという夢を暖めていた。
 幸い、この度、私たちの山仲間で都合のつく希望者が10月の月末に登ろうという話がまとまった。平成18年10月30日の早朝、4時に11名が2台の自家用車に分乗して光市を出発。8:30に福岡県立英彦山青年の家に無事到着する。今晩はここに宿泊するので仮手続きをして、「英彦山青年の家 登山・ハイキングコース」という地図を貰う。今回は「山伏峰入りコース」(6〜7時間・ハードコース健脚向き)を歩こうということに決定。
 8:55に出発して、前庭の国旗掲揚台の所から車道を横切り、平行して並んでいる旧豊前坊道に入って左折する。これから杉の木立に差し込む太陽光線の美しい情景を楽しみながら平坦な石畳の修験道を高住神社へと進む。

 9:13、階段を上った所にある高住神社に参拝して安全祈願をする。大杉や牛の像をなでたりして、9:25に神殿の右から登山道に入る。石の多い急な坂道を登っていると、そそり立った奇岩、逆鉾岩や筆立岩,屏風岩などが目を楽しませてくれる。
 9:58から休憩をしながら奇岩や切り立った岩壁、紅葉で美しく色づいた秋をカメラに納める。休憩後、自然石の急な石段を登るとシオジの林となり、シオジについての解説版も立っている。
 10:21鎖場のある急坂を上って尾根に到着して一息入れる。尾根道になるとブナの木が多くなってくる。10:34「英彦山山頂(中岳)から1000m」の標識を通過する。
尾根道を登っているとブナの木の下に5m四方ぐらいの二重の青い網が張ってある。上の網は粗く、下の網は編み目が細かい。これはブナの種を採集するためだそうだ。このような光景を下山までに4〜5カ所見かけた。
 10:45注連縄で囲んだ石の祠に到着。解説版によると、これは盤境(いわさか)である。ここが北岳の山頂(1192m)である。10分の休憩の間に写真を撮ったり、盤境の研究をしたりする。
 北岳を出発して、美しいブナ林を進むと正面の高い所に英彦山神社の屋根が見えてくる。これまでは比較的緩やかな登りであったが、だんだん岩場の急登になって、それを登り切ると11:30に中岳上宮広場に到着する。ここには「英彦山山頂(1200m)」の大きな柱が立っている。
 私たちは、ここで昼食・休憩をする。平日であっても、結構多くの登山者が広場で休んだり、昼食を摂ったりしている。暑いから日陰を探そうとしたが、太陽を背にして座れば背中が暖かく良いかげんであった。太陽の方に向かって九重連山を眺めながら昼食を摂る人も多い。

 昼食後、集合写真を撮って、12:30に南岳へ向かって出発する。上宮正面に回ると、本殿の屋根は台風ではげかかっており、みすぼらしい感じ。このように高い所にあるのだから、風がどちらの方向から吹いても、吹き上げる威力は強く、大変だろうとみんな同情していた。上宮の前で道は二つに分かれている。右の石段を下れば、奉幣殿へ通じる。
私たちは左の急な坂を下りて、しばらくブナ林を登って12:40に南岳に到着する。

 南岳頂上(1200m)には一等三角点があり、石祠や展望台もある。展望台に上ると山座標識もあり、前に九重連山や由布岳が見える。下のコンクリートでは筑波から来たという3人の女性が昼食を摂っているところであった。このあたりはカエデやドウダンツツジガが多く、紅葉が美しいと言われた意味が分かった。時期としては少し早めであったが、結構紅葉の秋を楽しむことができた。
 12:50、南岳を出発して険しい急坂の鎖場を経て、鬼杉を目指す。13:00に鎖場。新しいステンレスの頑丈な鎖を頼りに一人ずつ、ゆっくりと慎重に下ってゆく。
鎖場でないところも急坂が続き、自然石の階段状の所も、ロープがある所もある。
 13:37,玉屋神社から奉幣殿への分岐点、「鬼杉まで0.6km」で休憩をする。
この付近は杉の巨木が鬱そうと茂っており、鬼杉への道はその中の急な坂道を下らなくてはならない。これではここまで引き返す馬力はないので、そのまま下に進むのが良かろう。 14:04,右手の岩窟に大南神社が見える。折からブッポウソウの鳴き声が聞こえてくる。そこから水の流れの沿って下って、14:15にようやく鬼杉に到着。あたりの杉の木も大きいが、これは格別に大きい。周囲12.4m、樹齢1200年とのこと、屋久島でなくても永く生きれば、このような巨木になるのかと、畏れを抱くばかりである。「何人で手を繋げば、これを囲めるかやってみよう」と言う発案に対しても。畏れをなして誰一人賛同がなかった。精々写真に納めるぐらいで、小休憩をして先を急ぐ。
 そこから緩い坂道を下ると、14:58に車道に出た。しめしめと思い、右折してなだらかなスロープをチャラチャラ チャチャラ チャラチャラ チャチャラ とフォークダンスでも踊りたいような雰囲気で楽しく下る。間もなく英彦山大権現を通過して、15:12にしゃくなげ荘の前に出てしまった。これはおかしいと思うが、途中に右折するような所はなかったような気がする。兎に角4時までに宿に入らないといけないので、ここで歩き止め。21000歩の縦走であった。
 丁度、客待ち中のタクシーが1台いたので、無理を言って、2名の運転手と2名の世話人が乗り込んで青年の家に走ってもらい、すぐに宿泊の手続きをする。運転手はしゃくなげ荘で待っている仲間を連れに行ったので、全員無事予定の時間に入所できた。
 帰宅後、図書館で調べると、鬼杉の所から右側の岩場に掘られた石段を登って行けば玉屋神社へ向かうことができたらしい。しかし、このコースをとっても、玉尾神社から奉幣殿までには急坂があり、アップダウンが多く、1時間半ぐらいかかるらしいので、時間と疲労のことを考えると、結果的には今回のコースが良かったようである。怪我の巧妙とはこのことか。結果オーライであった。

 山伏コースと名付けられているだけあって、急峻な山で、ハードコースであったが、全員無事縦走できて、みんな満足そうであった。

 

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